涙の量や質が変化して、角膜や結膜に傷がついてしまう病気がドライアイです。
ドライアイになると、目が乾くなどさまざまな不快な症状があらわれます。 また、10秒間目を開いた状態を保つことができない場合も、ドライアイの可能性が高いといわれています。症状が重くならないうちに治療することが大切です。
涙を正常に目にとどめられなくなったドライアイの目では、ドライスポットという涙膜の薄くなった部分ができてしまいます。この部分は涙で守られていないため、異物や細菌、ウイルスなどの影響を受けて、角膜の表面が傷つきやすくなります。
ドライアイは単に目が乾くという病気ではありません。ドライアイでは、涙の状態が異常になってしまうために、「目が乾く」、「目がゴロゴロする」、「目が痛い」などの症状が生じてしまうのです。
この涙の異常は大きく2つに分けられます。1つは涙そのものが減ってしまう「量的な異常」、そしてもう1つは、涙の性質が変化し、悪くなってしまう「質的な異常」です。
目は刺激を受けたり乾いたりすると、反射的に涙を流して涙の膜を安定させようとします。つまり、正常な状態だと一時的に目が乾いても、すぐに目が潤うしくみができているのです。しかし、涙液減少型ドライアイでは、『目の刺激→神経伝達→涙の分泌』というシステムに異常があり、目が乾いても涙が分泌されにくくなります。
涙は3層構造になっていて目を守っています。 角膜に接しているのはムチン層で、涙を目の表面にとどめる働きがあります。ムチン層を覆っているのが水層で、涙の大部分が水層からできています。一番外側にあるのが油層で、涙が蒸発するのを防いでいます。 蒸発亢進型ドライアイでは、涙膜の油層を作っているマイボームという組織に異常があり、油層が十分に分泌されず涙が蒸発しやすくなります。
ドライアイはその言葉から、“目が乾く”というイメージがあるかもしれませんが、最近の研究から、涙が十分出ている人でもドライアイである可能性があることがわかってきました。それが、目が乾いていないタイプのドライアイ:「BUT短縮型ドライアイ」です。
パソコンなどの作業をすることが多いオフィスワーカーや、コンタクトレンズをつけている比較的年齢の若い方の間では、男女問わずこの新しいタイプの「BUT短縮型ドライアイ」の患者さんが増えています。
従来のドライアイの患者さんは、高齢の女性に比較的多いという特徴がありましたが、このように、「BUT短縮型ドライアイ」の患者さんの特徴は、従来のドライアイの患者さんとは全く異なっているのです。
従来、ドライアイに対する薬物治療では、涙に近い成分をもつ人工涙液と角結膜上皮障害治療薬の2種類でした。角膜上皮障害治療薬(ヒアルロン酸ナトリウム)には粘性があり、水分を保つ効果があります。また、涙や点眼液を目の表面に長く保持できることから、角膜の傷の修復にもつながります。
しかし、最近明らかになった新しいタイプのムチン(たんぱく質)が欠乏しているBUT短縮型ドライアイには、従来の治療薬では、なかなか症状が改善しませんでした。
今回、既存のドライアイ治療点眼剤とは異なる新しい作用機序をもつ、新しいドライアイ治療点眼剤(ジクアホソルナトリウム)が発売されました。涙液成分であるムチンと涙液の分泌を促進し、質・量の両側面から涙液の状態を改善することにより、ドライアイ症状を改善することが期待されています。
ドライアイのタイプとして、涙を角膜の表面にとどめるムチンという成分の働きが悪いため、角膜表面に微細な荒れが生じ、涙がうまく広がらない「BUT短縮型ドライアイ」が注目されています。従来のドライアイタイプに加え、BUT短縮型ドライアイにも治療効果が期待されています。
働き | 人工 涙液 |
角膜上皮障害治療液 (ヒアルロン酸ナトリウム点眼液) |
ドライアイ治療液 (ムチン/水分分泌促進点眼液) |
---|---|---|---|
水分を補充 | ○ | ○ | ○ |
水分を保つ | × | ○ | ○ |
傷を治す | × | ○ | ○ |
ムチンを産生 | × | × | ○ |
また、点眼薬のほかに乾燥予防や風が直接目に当たらないようにするために、ゴーグルタイプのドライアイ用メガネも効果的です。重症の場合は、涙の排出口の部分に栓をして涙の流出を塞ぎ、涙が目の表面にとどまるような治療を行うこともあります。
ゼリー状の物質を涙が出ていく涙管に注入します。体温まで温まると涙管で固まってしまうので涙の出口を塞いでくれます。痛みはなく2,3分で終了します。
ただ2,3ヶ月すると流れ出てしまうのでその時の状態を見て再注入することもありますし、症状が改善していれば点眼治療で様子を見ます。
また重症なドライアイの方はシリコン性の涙点プラグを使用します。これも痛みはなく2,3分で終了しますが経過中に自然に取れてしまったり(脱落)、まれに涙管の中に入ってしまったり(迷入)することがあります。
涙点プラグも改良されてきており、最近のものは脱落したり迷入したりすることは少なくなってきています。涙点プラグが入っていているときに痛みを感じたり違和感を感じたりすることはほとんどありません。 またどうしても気になるときは涙点プラグを除去することも可能ですが行うことはめったにありません。
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